煩悩。聞いたことある言葉だけど、それが何かをきちんと理解するページ

煩悩とはどういうことなのでしょうか?
漢字を見ると煩わしいという字と悩ますという字で煩悩です。
大晦日に除夜の鐘を打つのはこの煩悩を払うためだとも言われています。

インドの高僧ナーガールジュナが書いた「大智度論」には「煩悩とは能く心をして煩わしめ、能く悩みをなす。故に名付けて煩悩となす」と明記されています。
しかし、これを読んでもどういう意味なのか分からないという人が大半でしょう。

煩悩とは自分の心なのに何かと自分自身を悩ませて煩わせ苦しめる心の動きで、これが輪廻転生の原因だ、と書いている書物もあります。

煩悩は108もあるのは何故なのか

輪廻転生と言うのは、この世の中は生まれてから死ぬまで苦しむ上に、死後も別の命に生まれ変わって苦しみ続けるものだ、という意味です。
これでは、いったい何のために生まれて来たのかと思ってしまうでしょう。

煩悩は108あると言われていて、除夜の鐘を108回も打つのは、1年間の煩悩をいったんリセットして新しい年を迎えましょうという願いを込めているそうです。
また、硬式野球のボールの縫い目は108あり、数珠にも108個の珠が付いています。お坊さんのお経が退屈な時にでも数えてみると良いでしょう。

なぜ煩悩が108個あるのかにはいくつか説があります。
そのうちの1つは「四苦八苦」という言葉を式に直すと、4×9+8×9=36+72で108になるからだ、という説です。

108の煩悩はいくつかに分けられていて、大別すると6つになり、これらを総じて6大煩悩と呼びます。
6大煩悩と呼ばれているのは、貪・瞋・癡・慢・疑・悪見です。

6大煩悩が人を苦しめている

6大煩悩が人を苦しめている

6大煩悩の貧とは、貪欲のことです。
もっとお金持ちになりたいとか、あの人に愛されたい、賢くなりたい、さらに出世したい、女の子にモテたい、もっと遊びたい…など例を挙げるとキリがありませんが、こういった欲のことを言います。

瞋は怒りの心のことです。今の世の中、腹が立つことも沢山あるでしょう。
しかし、すぐに怒る人がいればあまり怒らない人もいます。アングリーコントロールという言葉があるように、怒りをうまくコントロールできる場合もあります。
短気で怒ってばかりいると、誰も寄り付かなくなってしまいます。

癡と言うのは愚痴のことです。
愚痴は妬みや恨みに該当するのですが、いつも愚痴をこぼしてばかりいる人には誰も寄り付いてきません。もう少しポシティブ思考になりなさい等と忠告を受けるでしょう。

慢は慢心のことを指し、おごり高ぶって自慢することです。

そして悪見ですが、漢字のごとく悪く見ることです。
物事を悪いようにしか捉えられないことを悪見と言います。

これらの6つの煩悩はさらに細かく分けることができるのですが、108の煩悩のなかで最も私たちを苦しめるのが三毒です。

三毒とはどのような煩悩なのか

人を最も苦しめている煩悩は、貪欲と瞋恚と愚痴の3つです。

もっとお金持ちになりたいと貪欲がはたらき、「今の政治が私を貧乏に陥れているのだ」といった怒りの気持ちがふつふつと湧いてきてイライラした気持ちになり、それが不平不満などの愚痴をこぼすことに結び付いてしまいます。

人に不平不満をこぼして気分転換を図るというケースも少なくないでしょう。
しかし人の愚痴を聞くと言うのは気分の良いものではありません。最初のうちは同情して聞いてくれていても、それが度重なると次第に人が離れて行きます。

すると、だれも自分の話を聞いてくれないけどもっと愛されたいとまた貪欲が働き、なぜみんなが自分から離れて行くのか、なぜ自分だけこんなに孤独なのかと怒りの心が芽生えてイライラし始めます。それがまた、愚痴をこぼすという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

こうして、負のスパイラルに陥るとなかなかそこから抜け出すことが困難になり、これが最も人を苦しめることになるのです。

煩悩を取り除くことはできるのか

では、私たちの心からこれらの煩悩を取り除くことはできるのでしょうか。

残念ながら煩悩を無くすことは困難です。不可能だと言っても過言ではありません。

胃癌や大腸癌、脳腫瘍といった疾病であれば、手術をして癌の部分を摘出すれば、また健康な体になることができます。
しかし煩悩は目に見える物ではないので、手術のように摘出したり切除するということはできません。

そして、もしも煩悩をすっかり取り除くことができたとしたら人は何も残らなくなるとも言われています。
煩悩を無くすと人はただの抜け殻になってしまうのです。

重要なのは、煩悩を抱えたままでも、幸せに生きていこうとすることです。
貪欲な心が湧いてくることは誰にでもあることだし、必要なことです。また、怒りの心が全くないのも困ります。
愚痴をこぼさない人でも、それは人に話さないだけでしょう。おそらく心の中にはたくさんの愚痴があるはずです。

煩悩を消し去るのではなく、煩悩を抱えたままで如何に生きていくかということが問われているのです。

まとめ

人は煩悩を抱えて生きています。人には108の煩悩がありますが、その中でも特に人を苦しめるのが三毒と呼ばれるものです。
もっと欲しいと思う貪欲な気持ち、怒りの心、恨みや妬みなどの愚痴が三毒です。

しかし人から煩悩を全て取り除いてしまったら、何も残りません。ただの抜け殻になってしまいます。
煩悩を抱えながらどのように生きていくかが重要なのです。

大晦日に除夜の鐘を打ちますが、その数が108回なのは煩悩の数だからだと言われています。
鐘の音を耳にしたときは、「自分は煩悩とどう付き合って生きているだろうか」と立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。