榎本 福寿えのもと・ふくじゅ

(文学部日本文学科教授 総合研究所長)


1978年4月佛教大学専任講師、1983年4月同助教授、1994年4月同教授。2005年4月〜2008年3月教学部長、2011年4月総合研究所所長。何年も前から、本学の元院生たちと各地の神楽を見て回っています。高千穂の夜神楽が海外公演までする一方、奥三河の花祭や遠山の霜月祭は過疎化に伴う後継者難、備中神楽は県の神社庁所属の神楽社が各地域に出張して催行、安芸神楽はコンテストで競うほどショー化等々、まさに多種多様多彩。興味は尽きません。

上代の様々な文献、作品を基に、表現内容やその技法を分析し、当時の日本人が達成した高度な文学、思想や文化を読み取ります。

古代日本のアイデンティティーを
卓越した表現力を駆使して描いた上代の文学作品

私が学生たちに教えているのは、文学の中でも主に上代の作品、すなわち神話や古代歌謡を始めとする奈良時代以前の文学作品です。授業ではもっぱら『古事記』や『日本書記』、『万葉集』を、表現・内容を中心とした厳格な解釈をもとに学生たちに学ばせています。

この時代の文学作品は、中国古典の強い影響を受けたなかに、当時の日本が自立を果たす過程を如実に表している点でも、どれも重要な文献です。

その特徴は、すべて漢字、漢文で表記されていることです。ひらがなを手にすることで読みやすさを獲得した平安朝以降の文学に較べ、少々とっつきにくいかも知れませんが、作品としての内容の豊かさ、達成度の高さは決して後の時代の文学に劣りません。

また、一般的には単純で素朴と評価されがちなのですが、当時の皇族や貴族、律令官人は中国古典に精通しており、作者たちの強烈な個性や独自性、あるいはこの時代独特の思潮を色濃く反映して、お手本とする中国の文学作品を越えるほどに洗練された作品も数多くあります。

「丁寧に読む」ことを基本に
作品に託された古代人の意図を読み取る

上代の文学作品は、高校時代まで読む機会がほとんどないということもあって、学問的なアプローチに戸惑い、あるいは敬遠しがちで、この分野の文学作品に関連したテーマを選択する学生の数は、他の分野ほど多くはありません。

そんな中、私は授業で学生たちに「作品を丁寧に読む」ことを基本に指導しています。「古代人が作品に託した表現上の意匠やこだわり、さらに作品の創造に打ち込んだ文学的情熱や高度な達成などを、作品の深い読解を通して見極め、分析する」ことを上代文学の学びのポイントとして重視するからです。

一つひとつの文章や作品の表現・構成をしっかりと読み解くことで、作品に対する読解力が深められ、他の作品を読むために必要な汎用力も身につきます。

週3、4日早朝のジョギング運動で体力と着想力をアップ


ジョギング中の榎本先生。かつては鴨川沿いに、出町から北山通りまでの往復の道をコースにされていたそうです。

現在私が自らに課している課題が、早朝のジョギングです。早起きは苦手なのですが、健康維持もさることながら、無理にも起床してジョギングしたあとの爽快感はなにものにも代え難いので、悩ましい限りです。ですから、毎回頭のなかのジョギングからはじまります。

40代に椎間板ヘルニアで痛めた腰の筋力アップで始めたのがきっかけで、当初は断続的に続けていたものが、今では週3、4回のペースでなんとか定着しています。単に健康づくりのためだけでなく、私にとって大きな思考の場ともなっています。

「走る→散策する→着想する」というパターンが、いつのまにか習慣化していて、近頃では走る度に着想のスイッチが入るようになりました。

季節ごとに変わる風景を見ながら頭を活性化させ着想する。とりわけ厄介な業務や研究教育の困難を抱えた時に、走りながら、あるいはその直後に示唆や閃きを得ることがあります。それが、私にとってとても重要なものになっています。

先生ご愛用のジョギングアイテムと
のどかで美しいコスモス畑

右の写真は、先生がジョギングで愛用するシューズと手袋。走る時には欠かせないアイテムです。また、左の写真は耕作放棄地を借りて先生が開墾・植育された自慢のお花畑。春は菜の花、秋はコスモスが咲き、近所の人や散歩する人と会話が弾むそうです。

榎本 福寿(文学部日本文学科教授 総合研究所長)
通信学生の皆さんへ

通信学生の皆さんの中には、年配の方もおられ、古代のロマンに魅せられて上代の文学を学ぶ方も少なくありません。上代の文学を学ぶには、漢字、漢文で成り立つこと、そこに特質がある事を知る必要があります。注釈類も揃っていますので、まずはそれらを参照しながら作品をきちんと読むことを心がけ、作品の意味や内容を深く掘り下げる訓練を繰り返すことが大切です。作品やその表現に習熟するなかで、古代のロマンが必ずや立ち現れてくるはずです。


『佛大通信』Vol.556(平成24年1月号)より転載