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人の暮らしの礎である
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ご専門の「居住福祉」という分野に進まれたきっかけを教えてください。学生時代は住居学を専攻していたのですが、3年生の時、友人に誘われて横須賀のキリスト教社会館で行われていた「田浦児童福祉研究会」という地域調査の研究会に参加するようになりました。新進気鋭の若い5人の先生方が中心メンバーで、毎回、土曜の夜から日曜にかけて、熱い議論が戦わされていました。私は末席に座ってただ話を聞いているだけでしたが、ここで見聞きしたことが福祉の分野に興味を抱くきっかけになりました。 また、研究会では大きな出会いがありました。中心メンバーのお一人で、福祉の世界をリードし、多大な業績をお持ちの一番ヶ瀬康子先生です。数年後、先生がサリドマイド裁判の被害者側の証人にお立ちになることになった時には、被害を立証するためのボランティアグループに加えていただきました。サリドマイド剤による体の障害が、暮らしの中で被害者にどんな不便を生じさせているのか。朝起きてベッドから立ち上がる、服を着替える、トイレに行く……1日の流れに沿ってあらゆる生活動作から立証しようとしました。当時は、リハビリの現場や交通事故の補償などで、障害の度合いを測る際、腕のどの部分からが欠損しているかなど、身体の状態だけを見るホフマン方式が主流でした。結局、裁判は和解で決着したため、具体的な補償額の算定には至りませんでしたが、あの時代、生活の中で障害をどう捉えるか、という問題提起が出来たことは大きかったと思います。 調査では様々な子どもたちに出会い、本当に色んなことを考え、学ばせて頂きました。例えば、極度に短い腕の被害児が、足で千羽鶴を折ってくれました。見事な出来ばえで、私よりずっと上手なのです。私も、幼い時から足で字を書いていたら……など想像し、もしかしたら健常者と言われる私たちは、実は様々な能力を失ってきた姿なのではないか、と考えさせられました。 最近の研究内容をご紹介ください。「社会福祉とは最も困難を抱えた人に寄り添う営み」。一番ヶ瀬先生の言葉です。私は、社会で一番弱い立場に置かれているのは子どもたちだと思い、以来、子どもたちの問題を中心に取り組んできました。長年の研究テーマの一つが児童自立支援施設(旧教護院)です。全国の職員の方々にアンケート調査を行ったり、北海道家庭学校、岡山成徳学校の2校では、実際に施設内に入らせてもらい、居住福祉の立場からの詳細な調査を行ってきました。
調査の際、重要となるのは、現状では子どもたちの生活が一般的な水準にあるのか、ということなんです。個人スペースは確保されているか、生活のけじめが付けられる間取りになっているのか、衛生面はどうかなどです。彼らは決して罰を受けるために入所しているわけではないんです。毎日安心してごく普通のリズムある生活をし、世間の人たちと同じことを経験することで、子どもたちは自信を持って世の中に出ていくことが出来るようになるのではないでしょうか。ノーマライゼーションの8項目は、子どもたちの将来の自立を考える上でも大変重要な意味を持っているのです。 また、調査した2つの施設は、現在も教護院時代からの「夫婦小舎制」を続ける努力をしています。実際の夫婦関係にある職員が住む小舎に、子どもを受け入れる仕組みです。いつも同じ職員が子どもに接することは、子どもの安心と安定を考える上で、非常に大きな意味を持つと思います。時代を反映して現在は減少の一途をたどっていますが、何とか「夫婦小舎制」が今後も存続されるよう、願っています。 最後に、通信教育生へのメッセージをお願いします。皆さんの熱心な姿勢にはいつも感心させられています。一人孤独に勉強を続けていくことは大変だと思いますが、学習会やスクーリングなどで仲間と助け合いながら、困難を乗り越えていって欲しいと思います。もう一つ、皆さんに提案したいのは、何をする時でも、様々な形や方法で自分を表現することです。そうすることで、勉強もさらに楽しく、創造的なものになっていくのではないでしょうか。資格取得という目標だけに満足せず、より大きな志を持って、社会に貢献できる人に成長して欲しいと願っています。 『佛大通信』Vol.519(平成20年12月号)より転載
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PROFILE
あべ さちこ 日本女子大学家政学部生活芸術科住居専攻卒業し、いくつかの大学を経て平成13年度より本学に。『もうひとつの子どもの家ー教護院から児童自立支援施設へー』(ドメス出版・今和次郎賞受賞)、シリーズ『高齢期介護の現在(1)ー(4)』編(ミネルヴァ書房)など、編著書多数。 |
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(C)佛教大学通信教育部 2000-2008
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