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| 住民が主人公となる まちづくりに必要な地域社会と 住民自治の在り方とは。 京都を対象とした地域社会と住民自治に関する研究を続けながら、マンションの自治管理組合の構築や支援に深く携わってこられた谷口先生。今、都市再生などで注目される社会学について、その現状や面白さについて語っていただきました。
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私は、京都における「住民が主人公となるまちづくり」に向けての研究を続けています。対象となるのは、西陣や室町など都心の地域社会。高度成長期、バブルを経て現代に至るまでのコミュニティの変化や街の移り変わりから、今後の展開に向けたさまざまな可能性を考察しています。 京都は、朝廷を中心に公家・武家・町衆の三者が均衡し、独特の自治の力を発揮してきた都市です。そして、衣食住すべての面において「京もの」という質の高いものづくりが発達してきました。こうした「京もの」の代表となるのが西陣や室町を舞台とする和装呉服です。これらの地域では、近代の繊維産業の基礎ともなる技術が切磋琢磨され、それを守り伝える自治が発展してきました。しかし、バブル崩壊後は和装産業全体が危機に直面。それに伴い、ものづくりを育んできた職住一体の町家という伝統的な京都の建築は、土地投機によるマンション群へと急速な変化を迫られつつあります。その結果、マンションに入居する新住民と地域住民との間で問題が生じるようになり、地域問題として取り沙汰されるようになりました。今では、彼らの協調が避けて通れない課題となっています。 |
近年、地方分権重視の気運が高まり、住民自治を後押しする法体系が整備されました。これを基盤に、地方が独自で問題を解決していく体制が進んでおり、京都でも昨年、新景観政策案が提案されました。これは、田の字地区(南北は御池通〜五条通、東西は河原町通〜堀川通)と呼ばれる都心地域では、建物の高さや建築デザイン、敷地の緑地率、屋外広告物などを規制するものです。住民自らが、例えば祇園祭にふさわしい伝統的景観を守り育てるというような姿勢をバックアップするのが目的ですが、規制により生まれるマイナス効果を懸念する宅地建物取引業界や広告業界による反発も強く、論議が高まっています。 高齢化社会が進む現代社会。今後は、人口の減少が避けられないでしょう。すでに、住宅は余る時代に入っています。ですので、これからは新しく建物を建てるだけでなく、既存の建物を活かしていく工夫も必要なのではないかと思っています。実際、ヨーロッパでは建築ならぬ減築で、質を高める建築法も行われるようになっており、日本も参考にすべきではと思っています。 私は、阪神大震災の復興の際、社会学者の立場から強引な建て替えに反対した住民側のサポーターとして訴訟の矢面に立った経験があります。その実録が「建替えか補修か―被災マンション住民の証言―」という冊子で、これは地域社会の専門家としての闘いの記録でもあります。こうした経験と社会学の見地を生かしながら、京都についても見守っていきたいと考えています。つまり、伝統的街区の価値そのものを地域住民が共有でき、活用できるような制度をつくり実践していく。そうした動きが、全国の同じような立場にある地方都市に勇気を与え、より良いまちづくりへの力になると考えています。 |
宇宙に連なる大地の研究は自然科学、大地に足を置く人間の研究が人文科学、その人間の結びつきを考えるのが社会科学です。社会学と社会科学は同義語ではありません。社会科学はさらに、経済学・法学・社会学などの分野に分かれます。社会学の研究対象は、経済学や法学のようにお金や法律ではくくりきれない、人の結びつきです。例えば、近隣地域。これは、家族の情愛とも会社の金銭ともちがいます。そうした関係性を分析し、大切に考え、未来へつないでいくのが社会学という学問です。 また、人としての生き方にもなるのですが、住民参画や、行政や企業との協働の橋渡しをしていこうという情熱も必要です。通信教育生には地域の活動に携わってこられた方々も多く、さまざまな実例や意見を耳にすることも少なくありません。私自身もそこから学ぶことが大いにあります。研究の対象となるのが最も身近なところにありながら、その広がりに無限の可能性がある社会学は、とても魅力的な学問であると私は思っています。 |
『佛大通信』Vol.498(平成19年3月号)より転載
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(C)佛教大学通信教育部 2000-2007
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