| 川崎 |
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この針金かけは、枝が柔らかく言うことをよく聞く若木のうちに、枝が良い方向に育つよう行ういわゆる「しつけ」です。盆栽が嫌いな方はこの様子を虐待だと感じるようですが、この作業は自分の好きな形を作るためだけに行うのではありません。枝同士が重ならず均一に太陽の光を浴びることができるよう調整して換気を良くし、外した後は自分の力で健やかに成長していけるよう方向づけるために巻くのです。枝が大きく太く育ってから行っても、なかなか言うことを聞いてくれません、時には枝を折ってでも矯正することがあります。盆栽の「しつけ」は健やかに育つための「道しるべ」。その点は子育てと似ているのではないでしょうか。 |
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| 岡本 |
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確かに、虐待としつけは違いますね。虐待は連鎖すると言われますが、連鎖しない場合もあります。その分かれ道は何だろうと考えた時、その人を取り巻く社会の中で、自分の歩むべき「道しるべ」を見つけることができるような、人とのつながりがあったかどうかということが気に掛かります。社会福祉では、その人がその人らしく生きられるように、その人自身の人生を自らが歩むことができるように環境を整えることにも気を配ります。その人自身の中に歩もうとする「力」があることを信じて、支援を行います。まさに盆栽作りに通じるものがありますね。ところで、川崎さんが盆栽美術家へと歩まれたのはどのような理由からなのですか? |
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| 川崎 |
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高校生時代から、生き字引みたいなおばあさんになりたいという夢がありました。例えば、災害などで物を全部失ってしまっても身に付いたことは残る。身に付けるなら伝統的な日本文化だと思い、日舞を習ったりお能を見に行ったりしていて、その道中で偶然、盆栽展のポスターを見かけ学校帰りに一人で見に行ったのです。価値も見方も解りませんでしたが、初めて樹齢数百年の盆栽に出会い、時間を超越した存在に圧倒されつつもうっとりと見つめてしまいました。それを見た盆栽雑誌の編集長が珍しい高校生だなと感じて、盆栽雑誌のモデルをやらないかと誘ってくださったことがきっかけになったのです。 |
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| 岡本 |
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盆栽雑誌のモデルをしながら盆栽の勉強をされていったのですね。どのような方法で学んでいかれたのですか? |
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| 川崎 |
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職人の方々に直接、質問していきました。最初の頃、盆栽の価値はどうやって決まるのか聞いたことがあって、盆栽はまずは古く樹齢が高いほど良いものだと教えてもらいました。人間は年を取る=「老い」になるんですが、盆栽は年を取るほど価値が出る。時間を「歴史」に変える生き方を盆栽はしていたので、一生盆栽に関わる仕事をしていこうと決めたのです。 |
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| 岡本 |
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ご自分が目指されていた生き方、つまり、年を取るほど価値が積み重なる「生き字引みたいなおばあさん」と盆栽がリンクしたわけですね。価値が積み重なるという意味では、盆栽は「現在進行形の美」ともおっしゃられていましたが。 |
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| 川崎 |
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盆栽は生き物で常に成長しています。そして、その時の成長に合わせた取り敢えずの完成形を造るのでそう言っています。 |