Neo Kyoto 杉本 裕美子 VS 奥野 哲也 元気な笑顔でお客様をお出迎え 祇園の若女将
料理旅館 花楽 杉本 裕美子
Interviewer 奥野 哲也 教授
教育学部臨床心理学科
 
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人と関わる仕事や研究を行っていることから、人と接する“女将業”に興味を持ったという奥野先生。祇園という、京都でも最も京都らしい場所に「料理旅館 花楽」を構える若女将、杉本裕美子さんに“女将業”について伺いました。

先生と女将さんの談笑の写真
旅館の看板の文字は、奈良県・當麻寺宗胤院(そいにん)の宮下寛昇住職に書いていただいたもの。


きっかけ>> 観光の中心地祇園に旅館を構えた理由

奥野 こちらの旅館は10年前くらいにオープンしたと伺いました。旅館としてはまだできたばかりとは思いますが、若女将さんはなぜ祇園に旅館を構えたのですか?
杉本   もともと両親がこの近辺でレディースホテルの経営を行っていたのがきっかけです。昔は“アンノン族”といって女性の一人旅が流行った時代があったでしょう? それが今の姉妹店になるのですが、花楽は昔私の家があった所に建てたものです。
奥野   若女将さんはこの辺の生まれなんですか!?
杉本   はい。小さい頃は建仁寺さんや八坂神社の境内なんかでよく遊びました。花街らしい風情があり、普通に三味線の音が聞こえたり、舞妓さんが歩いていたり…。
奥野   そして地元で旅館の若女将になったのですか…?
杉本   いいえ。始めはOLをやっていたんです。それで27歳の時に、若女将になりました。
奥野   何かきっかけがあったのでしょうか?
杉本   父が27歳の時に先ほどのホテルを起業したこともあり、同じ歳の時に手伝いに帰った私にそれなら、旅館をあらたにやろうと。うちは三姉妹で私が長女なので跡継ぎということもあったのですけどね。
旅館内部の写真
先生と女将さんの写真


仕事>> 言葉にできない“京都”をお客様に伝える

奥野 若女将としての仕事を通して大変だったこと、嬉しかったことなどがあればお聞きしたいのですが。
杉本   特に大変、ということはありません。ただ、お客様相手の仕事になりますので、お客様との距離が難しいですね。
奥野   距離というと?
杉本   かまってほしい人と、かまってほしくない人がいらっしゃるので、その辺の見極めでしょうか。当たり前ですが、この旅館を訪れる方は初めての方が多いでしょう。いったいどういうことを話したらいいのか初めの頃は迷いました。でも最近では京都の話を自然に織り込めるようになってきて。料理にじゅんさいが出ると、「京都ではつかみ所のない人を、じゅんさいな人やな〜っていうんですよ」というように。
奥野   なるほど旅館の良さというのは、人との触れ合いにありますからね。ホテルとの大きな違いはそこですね。 郷愁に触れる、といった…。
旅館内部の写真
杉本   最近京都でもホテルが増えてきています。その中でも旅館を選んでくれるお客様がいるのは、そういった旅館の良さを求めるからだと思います。畳であったり、それこそ地元民である私たちとの触れ合いであったり。お客様がゆっくりとできる空間を提供していきたいと思っています。
奥野   京都を訪れる方は“京都らしさ”を求めて来られると思うのですが、女将さんにとって京都はどんなところですか?
杉本   私が思う京都は、目、口、耳など体全てでいろんなものが感じられる場所。空間全体が情緒ある雰囲気をもっている特別な空間、という感じです。例えば知恩院さんの鐘の音とか、雨の日の石畳とか…。だからお客様には言葉ではなく、その場の雰囲気を感じてほしい。
奥野   私は京都の生まれで、学生時代まで京都で過ごしていましたが、離れてこちらへ戻ってくると、四季折々にいろんな表情を見せてくれるところだと思います。箱庭をそのまま街にしたような。祇園祭のお囃子の音とか、京都独特のムッとする湿気とか。そういえば空気が動かないのも独特ですね。
杉本   だからこそ夏が暑くて、冬は寒いですよね(笑)。


挑戦>> 伝統を大切にしながらも柔軟に対応していく

奥野 これからこの旅館をどんな旅館にしていきたいですか?
杉本   お客様が見えなくなるような旅館にはしたくないです。お客様の声を聞いて変えていくべきところは改善していきたい。まだまだ誕生して日が浅い旅館です。伝統がないからこそ、変化しやすく、柔軟に対応できると思います。この気持ちをなくさないように、日々お客様を迎えたいですね。
奥野   そして京都に伝わる“京都らしさ”は伝えていく。
杉本   はい。京都のことで、まだまだ知らないことはたくさんあります。私にとってはあまりにも日常過ぎて、お客様と話して初めて違いがわかることもありました。今はまだ私の中に知識などを蓄えている段階です。それをいつか発信できるようがんばりたいです!
奥野   京都には言葉だけでは表現できない良さがありますよね。
杉本   はい。そんな京都の良さを伝えられる宿になれば、と思います。
奥野   最後に通信生へのメッセージをお願いします。
外観の写真
料理旅館 花楽
京都市東山区祇園八坂神社南門前
TEL 075-541-2525
杉本   目的とかやりたいことを持っているというのは素晴らしいことだと思います。そういう人はきっと心が輝いているんでしょうね。
奥野   自分の花を見つけた、ということでしょうね。
杉本   先生上手いこといいますね(笑)。
奥野   そして勉強に疲れたら『花楽』へ癒しを求めに来てください(笑)。


杉本裕美子さんの写真   お客様には言葉ではなく、
その場の雰囲気を感じてほしい。

                              ―杉本
ロビーにある宮下住職作の書の写真 館内にさりげなく置かれた植物の写真
これも宮下住職の作で、ロビーにある「楽」の字。館内には同氏作の書が多く飾られている。   さりげなく置かれた緑も若女将の心づかい。
料理旅館 花楽 杉本 裕美子  すぎもと ゆみこ
プロフィール   八坂神社の南門すぐ側にある料理旅館の若女将。HPで公開されている「若女将の日記」では京都の観光情報から穴場の紹介、若女将の仕事などが毎日更新されるので必見!


After Interview
奥野先生の写真
京都には言葉だけでは表現できない
良さがありますよね。

                             ―奥野


日ごろ直接には縁のない方とのお話は楽しかったです。また京都市内とはいえ、静かなところでしたので、すっかり若い頃にタイムスリップしたような不思議な気分でした。雨上がりの庭は京都の良さが滲んでいました。これを機会に、心の癒しに遊びに来てみたい祇園です。いつまでも変わらないことを祈って…。
プロフィール 奥野 哲也  おくの てつや
    立命館大学文学部卒業後、病院勤務を経て法務省心理技官として鑑別所、少年院、刑務所で勤務。現在佛教大学教育学部臨床心理学科教授。専門分野は「犯罪心理学」と「心理査定」。衝動病理学(ソンディ・テスト)を研究テーマに人間行動の背景にある病理の解明に取り組んでいる。『ソンディ・テスト入門』(ナカニシヤ出版・2004年11月発刊)を監修。主な論文に「非行の凶悪化とソンディ・テスト所見」(佛教大学臨床心理学研究センター『佛教大学臨床心理学研究』)、「母親の顔が描けるようになった殺人犯少年」(財団法人矯正協会『家族画ガイドブック』)などがある。
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『佛大通信』Vol.479(平成17年8月号)より転載

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